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INTRODUCTION

女性として生きる凪沙と、親から虐待されてきた少女・一果。孤独な二人が寄り添う、世界で一番美しいラブストーリー。

瞬きひとつ。呼吸ひとつ。ゆらめく姿ひとつ。その刹那に誰もが目を離せなくなる俳優・草彅剛。
稀有な才能を持つ彼がトランスジェンダーとして生きる主人公・凪沙役に挑んだ『ミッドナイトスワン』。
このタイトルの真夜中の白鳥は、深い眼差しで毅然と佇んでいる。
演じることに真摯に向き合ってきた表現者・草彅剛そのものであり、かつ、美しく生きようと必死に泳ぐ孤高の白鳥のような凪沙そのものだ。

本作をオリジナル脚本として手掛けたのは、『下衆の愛』などで日本映画界が注目する俊英、内田英治監督だ。
その卓越した演出で草彅剛の新たな境地を見事に引き出した。
ヒロイン・一果役にはバレエ経験を前提としたオーディションの末に服部樹咲を抜擢。
本作が女優デビューとなり、演技も初めての少女はこの大役に体当たりで挑むこととなった。

他の共演者として、水川あさみ、田口トモロヲ、真飛聖などの個性派・実力派が集まり、スクリーンに彩りと厚みを加えた。
さらに、先鋭的な作曲家として名を馳せる音楽家・渋谷慶一郎が、内田監督の織りなす世界観に寄り添うように澄んだ深みのある音楽を手掛ける。

ストーリーはトランスジェンダーの凪沙が新宿のニューハーフショークラブのステージに立つシーンから始まる。
ある日、養育費を目当てに、育児放棄にあっていた少女・一果を預かることに。常に片隅に追いやられてきた凪沙と、孤独の中で生きてきた一果。
理解しあえるはずもない二人が出会ったとき、かつてなかった感情が芽生え始める。
次第に二人は互いにとって唯一無二の存在へとなっていく。

そこはかとなく孤独だった世界で、一果という眩い存在に出会ってしまった凪沙。
初めて愛を知り、母性が芽生え、凪沙はどのような「母」になるのか?
命がけで愛する人間としてそこに在り、草彅剛は母性と献身を見事に昇華させた。
ヒロインが踊る「白鳥の湖」「アルレキナーダ」の名作に乗せて、主人公の母性の目覚めを“現代の愛の形”として描く。

常識も性も超えた、疑似親子の物語は、高貴な美しさを湛えた、もっとも純粋で痛切なラブストーリーとなった。

STORY

あなたの母になりたい―。陽の当たらない場所で、あたたかな愛が生まれる。

新宿のニューハーフショークラブ <スイートピー> では、メイクしステージ衣装に身を包み働くトランスジェンダーの凪沙(草彅剛)。洋子ママ(田口トモロヲ)が白鳥に扮した凪沙、瑞貴、キャンディ、アキナをステージに呼びこみ、今夜もホールは煌びやかだ。

「何みとんじゃ!ぶちまわすど!」
広島のアパートでは、泥酔した母・早織(水川あさみ)が住人に因縁をつけていた。
「何生意気言うとるんなあ!あんたのために働いとるんで!」
なだめようとする一果(服部樹咲)を激しく殴る早織。

心身の葛藤を抱え生きてきたある日、凪沙の元に、故郷の広島から親戚の娘・一果が預けられる。
「好きであんた預かるんじゃないから。言っとくけど、わたし子供嫌いなの」
叔父だと思い訪ねてきた一果は凪沙の姿を見て戸惑うが、二人の奇妙な生活が始まる。

凪沙を中傷したクラスの男子に一果がイスを投げつけ、凪沙は学校から呼び出しを受ける。
「言っとくけどあんたが学校でなにをしようと、グレようとどうでもいいんだけどさ、私に迷惑かけないでください。学校とか、謝りにとか絶対行かないって先生に言っといて」
バレエ教室の前を通りかかった一果はバレエの先生・実花(真飛聖)に呼び止められ、後日バレエレッスンに参加することになる。

バレエの月謝を払うために凪沙に内緒で、友人の薦めで違法なバイトをし、警察に保護される一果。
「うちらみたいなんは、ずっとひとりで生きて行かなきゃいけんけえ…
強うならんといかんで」
凪沙は、家庭環境を中傷され傷つく一果を優しく慰める。

やがて、バレリーナとしての一果の才能を知らされた凪沙は一果の為に生きようとする。
そこには「母になりたい」という思いが芽生えていた―。

CAST PROFILE

草彅剛 凪沙役
服部樹咲(新人)桜田一果役
水川あさみ 桜田早織役
田口トモロヲ 洋子ママ役
真飛聖 片平実花役
田中俊介 瑞貴役
吉村界人 キャンディ役
真田怜臣 アキナ役
上野鈴華 桑田りん役
佐藤江梨子 桑田真祐美役
平山祐介 桑田正二役
根岸季衣 武田和子役

STAFF PROFILE

監督・脚本 内田英治
音楽 渋谷慶一郎

Photograph by Ronald Stoops